2016/11/25

この体に…人工乳房は作れますか？

25年前にハルステッド手術を受けた方からの最初の言葉です

乳房切除術というとかつてはハルステッド手術という方法が主流でした

1900年代に考案されたハルステッド手術は乳がんの乳房を全摘するだけでなくその下の筋肉も脂肪もリンパ節も大きく切除されました

皮膚の皮一枚になり肋骨が浮いて見える状態で多くの方がリンパ浮腫に悩んでおられます

今では考えられませんがステージ1と診断されても部分切除ではなくほとんどの病院の方針はハルステッド手術法で広い範囲で乳房以外も切除されました

「がんを根治する」
という目的があったにしろ患者さんにとっては生涯にわたって 肉体的にも精神的にも苦痛を強いる手術だったといえます

（聖路加国際病院ブレストセンター山内先生の記事より）

乳房再建が保険適用になったのに乳房再建を受けることができないのです

命と引き換えにこの体になっただけと長年 心に言い聞かせてきました

でも 元気になって普通の生活を送っているといつどんな時も体のラインを気にして下着にも服選びにも常に気を遣ってます

タオル１枚を肩からかけてでもせめてゆったりと温泉に入りたい

家族からは人生はまだ長いから楽しまないと！と背中を押されました…

伝わる心の痛みと託された願いは乳がん経験者でもあるわたしたち製作者の心に共鳴します

どのようにお作りするのが良いのか？

乳房をつくる…だけではなく左半分のおからだを再生するのだから薄い皮膚に対して負担にならない重さはどれくらい？

腕と脇がかさなる凹みはどの範囲までカバーする？

自然に見えるようにするには？

広くなる装着面でシリコンを柔らかく調合するのはどの部分？

わたしたちは何度も何度も話し合い数人でお作りしましたご要望にお応えし健側の乳房と同じように薄いシミもところどころに着色

『ひゃっ！私のおっぱいと同じ！良い人に出会えたわ ありがとう!!』

何気なく口にされた言葉…わたしたち製作者にとってこれ以上にない悦ばしい褒め言葉

そう！人生はまだまだ続く

新しく再生された乳房で温泉旅行楽しんでいただきたいです(*´ `*)